ループマシンの魔術師ことハシグチカナデリヤが、4月15日と16日に下北沢MOSAiCを舞台に「ハシグチカナデリヤワンマン 39歳最後の夜!」と「ハシグチカナデリヤワンマン 40歳最初の夜!」を行なった。タイトル通り今回は、彼が39歳最後の日と40歳の誕生日を迎えた日に行なわれた。ここでは、OAにダイナマイト☆ナオキを、メンバーに田邊ミサト/SAKUCHAN/を迎えた「ハシグチカナデリヤワンマン 39歳最後の夜!」公演の模様をお伝えしたい。
数多くの人たちが見守る中、39歳最後の日となるライブは「雨が止んだら君は消えてた」からスタート。お馴染みループマシンを用いて、少しずつ音のウネリを作りだす。そこへ臨場感を持った音を演奏陣が重ねだした。ハシグチカナデリヤは、少しずつ音の輪郭を明確にしながら、壮大なグルーヴロックでフロア中を包み込んでゆく。楽曲が音の輪郭を露にするのに合わせ、観客たちも身体を大きく揺らしだす。会場を覆うウネリが、少しずつ少しずつ音量と熱を増してゆく。そして…。
腹にズシンと響くドラムビートに、ハシグチカナデリヤのシャキシャキッとしたカッティングギターの音が重なりだす。身体を揺さぶる演奏に触発され、フロア中の人たちが手拍子をしながら想いを舞台へ届けだした。身体の奥から沸き立つ熱をぶつけるように、ハシグチカナデリヤは「燃えてフラジャイル」を演奏。感情を雄々しく染め上げてゆく躍動した楽曲だ。いつの間にかその演奏は、情熱を沸き起こすロックサウンドに姿を変えていった。
ループマシンを用いながら、ハシグチカナデリヤは音を構築してゆく。旋律が一つ一つ重なるたびに、その演奏は活きた躍動を描きだす。そこへ力強いドラムのキックビートが重なり、身体を騒がせる。バンド陣のファンキーな音を重ねた演奏は、次第に、気持ちや身体を揺さぶるダンスロックナンバー「ライヤイヤー」へと進化。フロアでも、大勢の観客たちが身体を小刻みに。ときに大きく揺らしながら、分厚いソウルフルな音のウネリの中へ身を預けていた。壊れたバネのように身体が勝手に騒ぎだす。これは嘘なんかじゃない、これこそがハシグチカナデリヤの奏でる真実のロックンロールだ。
もっともっと身体を揺らしたいだろと誘いをかけるように、ハシグチカナデリヤは胸をキュッと疼かせる美メロでキャッチーなグルーヴ曲「ラブリーメモリーラズベリー」を奏で、身体を16ビートの快楽へと導き出した。弾む演奏に身を任せ、心地好く身体をシェイクだ。ハシグチカナデリヤ自身も身体を揺らし、甘くメロウな、心とろけそうなグルーヴロックを通し、この会場をダンスフロアに塗り変えていった。さぁ、余計な心の負担をすべて断捨離し、歌と演奏へ素直に身を任せ、躍ればいい。
「去年は緊急事態宣言で、今年はまん延防止法で、一体何時になったら当たり前にワンマン公演が出来るんだ」と、ハシグチカナデリヤはMCで嘆いていた。その理由もわかる。本当なら21時終了で構成していたライブを、20時音止めのルールに従い、セッリトストを短縮せざるを得なかったんだもの。
ループマシンを用いて音を重ねながら、そこへ生きた音を塗り重ね、ハシグチカナデリヤは「実際No Happen」を演奏。まるで羽根が映えたように心地好く音符たちが舞い躍る楽曲だ。ハシグチカナデリヤは、馳せる気持ちのままに演奏を繰り出していた。次第にテンションと速度とグルーヴの増す演奏に合わせ、観客たちも身体を少しずつ大きく揺らしだす。間奏のブリッジでは、演奏を止め、今の気持ちをまくし立てるハシグチカナデリヤの姿がそこにはあった。ふたたび演奏に戻って以降も、跳ねた演奏を通し、彼らはフロア中の人たちを心騒ぐ宴へと導いていった。
ライブは、止まることなく新曲の「feeling feeling」へ。先ほど以上に跳ねた演奏の上で、ハシグチカナデリヤは沸き立つ気持ちを音符に変え、五線譜の上へ揺れ動くように並べながら、観客たちの理性を楽しいに塗り替えてゆく。この曲でも途中で演奏を止め、彼は歌詞に込めた想いを伝えていた。後半には、さらに熱を増した演奏を突きつけ、見ている人たちの身体を大きく揺さぶりだす。さすが、グルーヴの魔術師だ。
ダウナーな演奏を魅力に、ハシグチカナデリヤは少し塩気の効いた、でも胸弾む音のウネリを作り出す。ヘヴィ&グルーヴィで、少し塩味の効いた「恋はsalt」に身を預け、心地好く酔いしれようか。ソルティドッグじゃないが、少し塩味が利いてたほうが、グルーグという熱は、よりホットに感じるもの。それこそが、大人がロックを楽しむ醍醐味じゃない。
ハモリも含め、ループマシンを用いて次々と重ねたギターの旋律が胸を躍らせる。そこへバンド演奏が加わると同時に、楽曲はメロウでグルーヴィな「like a 花鳥風月」へ。ハシグチカナデリヤの華のある歌声とメロディーが気持ち良く身体を躍らせる。いつしか僕らの意識は、大きく広がるメロウ&グルーヴィな演奏に導かれ、大空へと舞い上がっていた。いつの間にか現実という扉を封印、手にしていた理性という鍵を捨て去り、彼らと一緒に、カラフルな音符たちがわちゃわちゃ混じり合う楽譜の上を心開放した姿で飛んでいた。ここは自由な空間だ。ここにいると限界さえ忘れ、何処までも翼を広げて飛んでいける。
スリリングなギターの音を次々と重ねながら、せまりだす。最後にハシグチカナデリヤは、「ニュートリノ」を演奏。感情を剥き出しに突きつける演奏が気持ちを揺さぶる音となり、身体を直撃する。気持ちをグイグイと引っ張るソリッドな演奏と、柔らかく心を包み込むおおらかなグルーヴを巧みに交錯しながら、ハシグチカナデリヤは見ている人たちを螺子の壊れた人形に変えていった。彼らの演奏に操られるまま、意識をメロメロに踊り騒ぎたい。終盤に見せた、いなたいブルーズなセッションも含め、1曲の中へ次々と心を酩酊するドラマを描きながら、ハシグチカナデリヤは見ている人たちを心地好く昇天させた。本当なら、もっともっとイメージの先まで突っ走り、興奮を覚えながら最高のグルーヴロックでイクところまでイッてしまいたい!!
あっという間だ。いや、あっという間すぎる。満ち足りない人たちからの声を受け、ふたたびハシグチカナデリヤとメンバーたちが舞台へ。この会場をブルーズ&ハードな衝撃で染め上げろ。アンコールで奏でたのが、ブルーズでソウフルな「カメレオマン」。いなたい音が、身体に熱く重く降り注ぐ。跳ねた演奏に触発され、フロア中の人たちが身体を揺さぶっていた。メンバーたちと観客たちは、もっともっと非日常の中で混じり合おうとしていた。激しい演奏に気持ちを騒がせながら、ハシグチカナデリヤのけしかけるような歌声に誰もが酔いしれていた。終盤で見せたツインギターの演奏も、胸を熱く騒がせた。
正直いえば、物足りない。だからこそ、この続きは、明日また楽しもうか!!
PHOTO:
TEXT:長澤智典
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セットリスト
「雨が止んだら君は消えてた」
「燃えてフラジャイル」
「ライヤイヤー」
「ラブリーメモリーラズベリー」
「実際No Happen」
「feeling feeling」
「恋はsalt」
「like a 花鳥風月」
「ニュートリノ」
-ENCORE-
「カメレオマン」