ハシグチカナデリヤが、今の閉塞だらけの世の中へ向けて。自由にライブを…音楽さえも楽しめない世の中へガツッともの申すべく、8月29日(日)にVeats Shibuyaを舞台に主催したのが、「カナデリンピック2021~ライブは不要不急じゃねぇんだよ!バーカ!アーホ!の祭り」になる。
出演したのは、ハシグチカナデリヤを筆頭に、ダイナ四バンド・ザ・マスミサイル・CHERRY GIRLS PROJECT・サナダヒデト(trio)・にっぽんワチャチャの計6組。ここには、サナダヒデト(trio)のライブの模様を、お伝えしたい。
誰も縛られない心の自由を、サナダヒデトのライブが与えてくれた。
この会場に熱い風を吹かせるように、最初にサナダヒデトが奏でたのが「永遠少女」。感情を熱く鼓舞するような演奏と歌声が、印象深い。トリオ編成らしい、気持ちのグルーヴを一つにした演奏と歌声が、切れ味鋭くもノリのあるビートに乗せてせまってきた。
ヘヴィ&グルーヴな演奏を持って、観ている人たちの身体や気持ちを揺らしたのがUnとAhの探検隊」。ベースを演奏しているのはハシグチカナデリヤ。ズクズクとしたノリが、次第に身体を大きく揺らしていく。
「今日ここで、俺でしか鳴らせない音楽をやるのが、不要不急じゃねぇよということだと思います」の言葉が嬉しい。「音楽の祭りを大いに楽しもうじゃないか」の言葉の意味を示すように、サナダヒデトは後ノリのグルーヴが心地好いブルーズなロックナンバー「白夜」を演奏。フロア中の人たちの身体をゆったりと揺らしていった。歌の中へ「今夜はブギーバッグ」のオマージュとなる言葉も組み込む、その冴えたセンスが、このイベントへ出演した表現者らしい個性にも見えていた。
「GO!!」と叫んだサナダヒデトの声を合図に、楽曲は一気に熱を持って駆けだした。「ナイトライダー」に乗せ、突き上がる無数の拳。高ぶる気持ちのままに歌い叫ぶサナダヒデトの歌声が、観客たちの気持ちにも高陽した熱を注ぎ込む。最高に胸を熱くさせるグルーヴミュージックが、そこには生きていた。
熱を大きく脹らませる演奏に触発された観客たちは、続く「けものの学校」でも、拳を振り上げ、熱い音のウネリの中へ飛び込んでいった。どんどん熱を孕んでアガり続ける演奏と、抑揚を抱きながらも情熱たぎる歌声。そして…。
「世の中はコロナ禍で悲しさや淋しい気持ちになっているけど、すぐ側にいる人たちが笑っていてくれたら。俺はそれでいいんだと思います」。その言葉に続き、サナダヒデトは「モーニングライト」を、ギターを爪弾きながら朗々と歌いだした。とても希望に手を伸ばすような歌だ。彼の歌声や演奏へゆっくりリズム隊の演奏が絡みだすのに合わせ、楽曲は次第に明るい彩りを増してゆく。大切にしたい想いを、サナダヒデトは消えないインクのように胸の内側へしっかりと染み込ませてゆく。想いを叫ぶ歌声が、胸に消せない願いを記していった。
「明日に世界が終わっても~明日も僕らは笑ってる くだらない冗談の中で」。沸き立つ気持ちを演奏と歌声へダイレクトに投影するように、サナダヒデトは「孤独の星」を雄々しく歌っていた。強い想いを、この場に足を運んだ人たちの胸へしっかりと刻むよう、魂の震えるままに歌っていた。その曲は、歌に込めた想いは、心にどんどん光を差し込んでゆく。それが小さな光でもいい、確かに気持ちは、この歌に、サナダヒデトの歌声に揺さぶられていた。
最後に、サナダヒデトは「悪魔はラッパを鳴らさない」を演奏。胸に抱えた気持ち張り裂けんばかりの想いを、彼は歌に乗せ吐き出していた。強い意志を持った言葉や唸る演奏が身体を揺さぶり、拳を高く突き上げさせる。気持ちが沸き立つなら、感じたままに動けばいい。ここでは歌えないけど、心の中で歌い叫べばいい。心は自由だ。誰も縛られない心の自由を、サナダヒデトのライブが与えてくれた。
サナダヒデト
僕はピンチヒッターのピンチヒッターだったので、とても責任重大だなと感じている部分があったんですが、それを置いてもやっぱり音楽って楽しいなという解放感を味わえたし、音楽が持っている、重力を解き放つような力が今日の会場に溢れていたので、とっても気持ちよく演奏できました。配信も僕はもちろん大好きなのですが、目の前に人が居るっていうのはレスポンスが早いわけで、そのレスポンスを受けて僕がまた新しいクリエイティブなものを返せる、そのラリーがずっと生のライブでは続けられるので、そういう部分も含めて、今日は大きな会場で楽しくライブができました。
PHOTO: 高橋圭司
TEXT:長澤智典
コメントテキスト:南明歩
サナダヒデト
https://sanadahideto.com/
https://twitter.com/sanada_hideto
セットリスト
「永遠少女」
「UnとAhの探検隊」
「白夜」
「ナイトライダー」
「けものの学校」
「モーニングライト」
「孤独の星」
「悪魔はラッパを鳴らさない」