作詞家、籠尾訓一がCHERRY GIRLS PROJECTを通して伝えたかった平和の意味。

  傷ついた心や、迷い、葛藤する人たちの想いへ寄り添いながら、共に”その先”へ進もうと歌い続けてゆく楽曲を軸に表現し続けているCHERRY GIRLS PROJECT。自分たち自身が何度も挫折やあきらめを経験し、弱い心を知っているからこそ、彼女たち自身が、それぞれの歌の当事者となって想いを歌声に乗せてきた。そこにリアルを感じるからこそ、同じ痛みを心に抱える人たちが共鳴。その輪を今、全国各地へ広げている。

  CHERRY GIRLS PROJECTの楽曲と言えば、サウンド・プロデュースを担う岡野ハジメの手腕にスポットライトが当たることが多いが、楽曲を輝かせられるのも、原曲が人の心を打つ力を持っていることが一番の要因。中でも、CHERRY GIRLS PROJECTの作詞を担う籠尾訓一自身が、何度も生きる意味と対峙しながら、己の存在意義を見いだしてきた人。彼の綴る言葉の一節一節に生々しい経験談が活かされている。その経験は、自己主張の弱い人ほど成長してゆく過程の中で味わってきたことであり、経験するたびに、記憶の奥底へ封印し続けてきたこと。だから、自分を上手く出せない、生きるのが下手な人たちの心へ、CHERRY GIRLS PROJECTの歌はとくに刺さり続けてきた。

  実は籠尾訓一、以前から形にしたいと思っていた楽曲があり、一旦は6年前に制作。それをずっと温めてきた。それが、「戦争」をテーマに据えた「大和~遥かなる幻想~」だった。作詞のみならず作曲もみずから担当。平和や幸福という言葉が希望や幻想でしかなかった戦時中。偽りの希望という言葉を突きつけられ、それでも下された言葉を信じながら戦地へ赴いた兵士たちの心の叫びを、籠尾訓一は「大和~遥かなる幻想~」の中へ、自らが戦場で祖国へ想いを馳せる兵士の気持ちになって書き綴った。

  彼自身、この楽曲へ強い想いやメッセージを詰め込んだからこそ、この歌に込めた想いを、兵士となって体験したかのように深く理解してくれたうえで歌ってくれるアーティストを長年探し続けてきた。

  形は違え、嘆き、葛藤する心の苦悩を、まるで自分事のように歌うCHERRY GIRLS PROJECTの姿を長く見ていく中、総合プロデューサーMr.Kの視点では無く、作詞家籠尾訓一自身として「今のCHERRY GIRLS PROJECTなら「大和~遥かなる幻想~」に込めた想いを、一人の兵士の視点ではなく、その人を想い慕う人として歌ってくれるのでは」と想い、この曲をCHERRY GIRLS PROJECTに託した経緯もある。

  哀切さを抱いた壮大なバラード曲「大和~遥かなる幻想~」を形にするに当たり、CHERRY GIRLS PROJECTの現制作チームが参加。この楽曲に込める理由も理解した上で、楽曲アレンジをさいとう涼、楽曲プロデュースを岡野ハジメが担っている。

  曲中では、歌詞の一節一節を、メンバーがそれぞれ想いを零すような声で歌い繋いでゆく。その歌声は、愛する人へ向けた祈りにも聞こえてくる。男性ではなく、女性が歌い、悲痛な想いに優しさが加わったことで、よりメッセージ性が浮き上がったようにも感じれる。

  歌詞の中に出てくる「赤」と「青」という象徴や、この歌詞に込めた想いについて、籠尾訓一は「赤が陸軍、青が海軍と国の為、愛する人の為に命を犠牲にし、戦った兵士とその家族の気持ちに焦点を当てている」と言葉を寄せてくれた。CHERRY GIRLS PROJECTのメンバーもこの楽曲の尊さを理解しているからこそ、今回自分たちがこの楽曲をどう表現したら良いか?という課題について、ミーティングを申し込んできたという。

  東京オリンピックという平和の祭典を終え、今年、76回目の終戦日も迎えた。感染症を含め、いろんな危機がこの国に渦巻く中、平和の意味を勘違いし、平和ボケした人たちに向け、この楽曲を終戦記念日の8月15日(club asia)に発表したCHERRY GIRLS PROJECT。彼女たちの…というよりは、語り部となったCHERRY GIRLS PROJECTを通して籠尾訓一が伝えかった想いへ、この機会に触れていただきたい。

「大和 ~遥かなる幻想~」

遥か遠い旅路の中で
安らぎ感じる場所求め
叶うはずのないこの願いを
きつく胸に抱きしめ
宇宙に散らばった幾千の
星は輝きに満ち足りて
失いかけた希望の欠片を
淡く照らし続けた

平和がやがて時と共に
訪れる事を信じ続け
絶望に苛まれた心
奮い立たせて

赤染まる幻想は
いつか見た夢語りで
失くしかけた温もりは
熱く胸の中へ

暗く長い果てしないとき
偽り感じて瞳閉じる
彷徨い疲れたこの身体は
激しい雨に打たれ
温かい胸に抱かれた
幼き記憶は鮮やかに
いま蘇る儚き契りを
強く祈り続けた

未来はいつも光が射し
輝いてると信じながら
傷ついた心の暗闇を
灯し続ける

青く染まる幻想が
行く先に立ち揺らめく
霞み消せぬ頂きを
深く胸の中に

そっと思い返る
懐かしい空
会えない君の為に
戦い続ける

赤く染まる幻想は
いつか見た夢語りで
失くしかけた温もりは
熱く胸の中へ
青く染まる幻想が
行く先に立ち揺らめく
霞み消せぬ頂きを

深く胸の中に
熱く胸の中へ

TEXT:長澤智典